現代国語 「農業用水路」(1)
問2 市販解答例
現代の機能的効率主義が自然と生活との循環生態系を乱してしまったことに対する批判の気持ち。(①)
本来「多目的機能」などと数えたてることのできない、水路と農民生活の一体化を、今あえて割り切って言うのだが、という気持ち。(②)
水路の多目的な機能を自然との付き合いから生じるものと見て、近代的な効率主義に疑問を抱く気持ち。(③)
自然との付き合いには馴染まない、「多目的」という今日的立場に立つこと。しかもその多目的な「機能」さえ忘れられつつある現状をはっきりと明示したい気持ち。(④)
あなたの作成した答案を客観的にみられるようになるための1つの過程として、第一には、あなた自身の答案を他人から評価して貰う、第二には、あなたが他人の作成した答案を評価する、ということが訓練の過程である。
順次検討してみよう。
① アウトラインとしては正しい。しかし、論理性が足りない。
② 本文で「 」に入っている「多目的機能」という言葉は文脈既定語(一般的な辞書的語彙から離れて、このテキストによって規定される独特の意味が与えられている語彙(筆者言語)である。この文脈既定語である「多目的機能」を、テキストの中の論理と一般的な語彙で説明しなくてはならないのが、求められている作業であるので、求められている作業を放棄しているため加点要素はない。解答の粗型は、「…に対する批判。」で良い。批判的な気持ちについて「今敢えて言うのだが」などという表現を工夫する必要はない。「…に対する批判」の「……」の内容が問われているのである。
③ ①同様である。恐らく①は、③を参照して作成されたのであろう。
④ ②同様、文脈既定語をそのまま答案に残している禁則を犯している答案。
【現代国語で求められている基本操作】
テキストの中で、一般的な辞書的語彙から離れた意味で使われている単語があったとすると、その単語は、本文を離れてしまうと、本文と同様の意味を発揮しなくなる。だから、答案として本文から切り出してしまうと、意味が通じなくなるのである。ここでは、「多目的機能」が、一般的な語彙での意味と異なる意味で使用されている。その意味は「単一目的」ということである。
しかし、「多目的」は皮肉な表現だから、「単一目的」と書けばいいだろうというのは、本文に即した処理ではない。そのような乱暴な、本文に依拠しない議論は、根拠のない推量の域を出ないので高く評価できない。
【正解】
近代的水路が、農業用水路の生産機能と経済効率という効率だけを重視して、設計施工されていることに対する批判。
あなたは、この答案の論理性の高さが分からないと思う。それは、本稿の最後で姿を現すだろう。
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